伝統の100年フード部門〜江戸時代から続く郷土の料理〜
梶賀のあぶり
三重県南部の小さな漁師町・梶賀町に伝わる魚の燻製料理「梶賀のあぶり」。サバの幼魚など小魚に塩だけで味付けし、竹串に刺し、薪で熾した火の上で2時間ほど遠火でじっくり焼き上げ、薪火からの煙でほんのり燻製風味となります。燻し焼く間に無駄なあぶらは削ぎ落され、塩で引き立てられた魚の身の味と煙の香りが、口の中いっぱいにじゅわっと広がります。漁師が酒のつまみに愛し、女将さんがおかずに重宝し、子供がおやつに頬張る、100年以上もの間、梶賀町の家々で食べられてきた食文化です。その始まりを知るものは誰もおらず、高齢住民の「私のおばあちゃんが娘の時にも食べとったらしいわ」との思い出話から、明治初頭には根付いていたと推定されます。元和5年(1619年)の納税記録から、少なくとも江戸初期には地域で漁業を営んでいたことが分かり、食生活を豊かにしようという生活の知恵で生み出されてきた食文化であろうと推測します。
