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全国各地の100年フード

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岐阜県

近代の100年フード部門〜明治・大正に生み出された食文化〜
令和4年度認定

大歳のごっつお

美濃加茂市では12月31日を“大歳(オオトシ)”と呼び、大晦日には“大歳のごっつお”(大歳のごちそう)が、必ず食卓にあがりました。大きな鍋に切った大根、ごぼう、にんじん、こんにゃく、里芋を順に入れ、上に煮干しをのせ水を注ぎ煮ます。堅い野菜に火が通ったらしょうゆで味付けし、豆腐、油揚げ、糸昆布をのせ、弱火でじっくり煮ます。大晦日はこの煮物とお頭つきの魚としてメザシ(鰯の干したもの)がつきました。山に囲まれた岐阜県では、畑で野菜は採れますが、新鮮な魚は手に入らず、海の幸は定期的にやってくる行商人から買うのが普通だった時代があります。当時、メザシもたいそうなごちそうでした。大鍋で煮た“大歳のごっつお”は正月三が日の間、何度も温め直して食べられ、忙しい主婦を助けました。今でも、正月の定番料理として食べる家庭も少なくありません。
岐阜県
伝統の100年フード部門 〜江戸時代から続く郷土の料理〜
令和4年度認定

へぼ甘露煮

「今日見つけたへぼの巣は大きいでよ。餌についても、なっかなか見つけれんで難儀した。夜はみんなでへぼ抜きだぞ」「ほりゃあ大変やったね。ぞんがい大きい巣だてぇ。早よう抜いて、今晩煮よっかねぇ」「へぼ甘露煮」はそんな家族の会話から始まります。東濃の人々が「へぼ」と呼ぶクロスズメバチ、その蜂の子は貴重なタンパク源、そして秋の山の楽しみとして親しまれてきました。食べるだけでなく、それを探すこと、家で飼育することも楽しみです。かつて日本各地で食べられていた蜂の子は、中部地方の山間部では今なお盛んですが、東濃地方では、蜂追いや飼育でたくさん収穫し、甘露煮をはじめ、炊き込みご飯、朴葉寿司、五平餅にも用いるなど、地域の食文化の一つになっています。野山でへぼを追い、ようやく見つけたへぼを皆で巣盤から抜き、甘辛く煮付けた「へぼ甘露煮」は、ふるさとの自然や暮らしを思い起させる、特別でうまい「ご馳走」です。
へぼ甘露煮
伝統の100年フード部門 〜江戸時代から続く郷土の料理〜
令和3年度認定

岐阜の鵜匠家に伝わる鮎鮨

古くから美濃の名物として知られていた“鮎鮨(あゆずし)”です。伝承では、元和元年(1615年)、大坂夏の陣に勝利した徳川家康・秀忠父子は、岐阜に招かれ鵜飼でもてなされたといわれています。その時に食した鮎鮨を気に入ったのか、同年に鮎鮨を将軍家に献上する制度が始まりました。ぎふ長良川の鵜飼の鵜匠家に伝わる鮎鮨は、江戸時代の献上鮎鮨の伝統を引き継ぐもので、飯と塩で鮎を発酵させた、酢を使用しない「なれずし」の一種です。毎年冬になると、年末年始の贈答品として鮎鮨がつくられています。①塩漬け、②塩抜き、③鮨漬け、④口開けを経て完成した鮎鮨は、独特の風味がして何度でも食べたくなります。岐阜市内の旅館では、鵜匠家に伝わる鮎鮨を参考に独自に開発した鮎鮨を提供しています。新たな鮎鮨の商品開発に向けた企画検討も進められています。「家康公ご賞玩の味」として守り継がれてきた岐阜の誇る伝統の味をぜひご堪能あれ!
岐阜県
近代の100年フード部門〜明治・大正に生み出された食文化〜
令和3年度認定

寝寿司(ねずし)

寝寿司は馴れ寿司の一種で、岐阜県の飛騨地方を中心に冬の保存食品として作られ、飛騨地方では正月の御馳走として大切に伝えられてきました。起源は明治以降と考えられ、100年以上の歴史があると推定されています。作り方は人参、大根を短冊に切り、少し塩を振り、塩鱒は水で塩抜きをし細かく刻みます。これらに米麹をまぶして冷やした白ご飯に混ぜ樽などに入れ、重しをして約20日間ほど熟成するため寝寿司といわれています。寒さが厳しくなる12月中旬頃から漬け込み、20日ほど熟成して正月に間に合わせます。作り方にマニュアルは無く、昔から各家庭に代々伝わってきた郷土料理です。冬の気温変化などにより味が変わりやすく熟成まで手間がかかります。発酵食品特有の滋味に地方ごとの冬の気候の微妙な差、材料による味の差なども加わって生まれる味はとても奥深い味です。地域の重要な食文化として家庭や地域が連携して後世に残したい食べ物です。
岐阜県
伝統の100年フード部門 〜江戸時代から続く郷土の料理〜
令和3年度認定

朴葉寿司

初夏、朴の葉が若葉色になると、各家庭で作り始め、昔は田植えの忙しい時期の手軽な弁当として親しまれてきました。朴葉には殺菌効果があるといわれており、持ち運びしやすく日持ちもすることから古くより田植えなど共同作業の時の携帯食に用いられてきました。 朴葉寿司の具材や調理方法は各地域、各家庭で異なっています。すし飯の上に鮭や鯖、鱒、キャラブキ、椎茸などの具をのせて朴葉で包んだタイプと、鮭や鯖、鱒をほぐしてすし飯に混ぜ、その上に具をのせ朴葉で包むタイプがあります。具はヘボ(蜂の子)など、地域特有の食材が入ることもあります。 各地域や家庭における具材、包み方はそれぞれです。葉の包みを開いて頬張ると朴の葉の香りがふんわりと漂い懐かしい味に癒されます。
岐阜県
伝統の100年フード部門 〜江戸時代から続く郷土の料理〜
令和3年度認定

朴葉の食文化

朴葉を使った料理は、民俗学者柳田國男氏の著書「木曽から五箇山への旅秋風帖」に朴葉すしを食した文章があることから、明治42年(1909年)以前より伝えられてきました。朴葉に包まれ食事の際に手が汚れにくく、朴葉の殺菌効果により日持ちが良いのが特徴です。携行食として持ち歩き、農作業や木こり仕事の合間などにも食され重宝されています。朴葉すしは、各家庭の味があり、当会では、春に地元で採れたフキを煮たキャラブキや煮シイタケ、卵、塩鮭、シソの実、紅ショウガが入ります。朴葉もちは、米粉を蒸して丸くのばし、つぶ餡を挟んで朴葉で包み、二度蒸しします。田植えの時期が、旧暦の端午の節句頃から、半夏生頃であり、朴葉を使うにはちょうど良い季節で、端午の節句のお祝いや田植えのねぎらいに、「ハレの日」のごちそうとして、朴葉寿司、朴葉もちが作られてきました。この土地ならではの食文化として、郷土の味を、守り続けていきます。
朴葉の食文化
岐阜県